2018年7月、スマホ用買取アプリとしてサービスを開始した「ラクウル」。ソフマップが目指す環境循環型社会の実現に向けて大きな役割を担うこのサービスは、どのような思いから立ち上げられたものなのか?を開発チームのメンバーが前後編にわたって紹介します。
前編では、プロジェクト当初から関わる2名の担当者が、それぞれの視点から「ラクウル」立ち上げまでの経緯や実際の取り組みについて、エピソードを交えながらお伝えします。
SDGsポイント
〇リユース市場の活性化 | 「ラクに売れる」を実現する買取アプリの開発により、リユース市場の活性化に貢献。 |
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〇環境循環型社会へ貢献 | 個人の持ち物を資産化する「持ち物帳」や「買取マネー」の導入によって、製品の循環を促し、廃棄物削減を実現。 |
〇誰でも使いやすいアプリ設計 | 直感的に使えるようなデザイン性や機能性を重視し、老若男女全ての人にとって使いやすい設計を実現。 |
経営企画部 係長有馬 雄樹(ありま ゆうき)
「ラクウル」のプロジェクト全体を統括。サービス拡充についての施策全般を担当する一方、サービス認知促進の企画立案・実行など幅広い取り組みを手掛けている。
「ラクウル」で、リユースをもっと身近に
これまでもソフマップでは、Web上での買取サービス「らくらく宅配買取」を展開してきましたが、お客様にもっとリユースを身近に感じていただけるよう、スマホでの買取アプリの開発話が社内で持ち上がりました。
プロジェクト発足からサービス開始までの期間は約半年。短い期間でしたが、妥協せずこだわったのは、アプリの操作感などを左右するUI(ユーザーインターフェース)面でした。「お客様にいかに簡単・手軽にご利用いただけるか」。ここを疎かにしてはせっかくアプリを入れていただいても、すぐに使われなくなってしまいます。だからこそUIに注力しなくては、という思いでこのプロジェクトに臨みました。
すべてのお客様の使いやすさのために
当初、私は新規のお客様にご利用いただくことを想定し、アプリのメインターゲットとして若年層を中心に考えていました。しかし、一緒にプロジェクトに取り組んだ佐藤課長は、従来の40代~50代のお客様をはじめ老若男女幅広い層をターゲットにしたい、との考えでした。
正直、「何が正解なのか」は分かりません。お互いこのサービスに対する思いが強く、意見がぶつかりあうことも少なくありませんでしたが、それでも議論を深めていきました。その結果、佐藤課長が提案していた幅広い層をターゲットとすることが決まり、UIについては私に一任してもらえることになりました。
私は、「いかに操作をシンプルにするか?」「画面を見てすぐ使い方が分かるようにするためには?」など、さまざまな年代のお客様が直感的に使えるようなUIを慎重に検討していきました。
そしてサービス開始の約3ヶ月前となる2018年4月頃に仕様が固まりましたが、お客様の使いやすさを追求し、リリースの直前までチーム内や開発ベンダーとブラッシュアップを続けました。「楽に売れる」アプリということで「ラクウル」というアプリの名前が決まり、イメージにラクダを採用することを決めたのもこのころでした。
こうして、お客様に自信を持ってこのアプリをご提供するために、こだわるところへきちんとこだわり、ついにその年の7月にサービスを開始することができました。
無料査定のお申込み画面。箱がない方は梱包箱の依頼も可能
所持品の価値が一目でわかる新機能「持ち物帳」
リリース以降、常に使いやすさの向上を目指してUIの改善を行ってきましたが、当初から計画していたバージョンアップをいよいよ行うことになりました。それが2019年5月に実装した「持ち物帳」です。
お客様が所有するさまざまな製品をこの「持ち物帳」に登録すると、最新のソフマップ買取金額が表示されます。自分が所有する製品の価値変動を把握できるようにする機能です。
「持ち物帳」にデジタル家電などの資産を登録することで、自分が所有しているものを管理できるようになり、使っていないものがあれば、その時の買取価格が一目でわかって、そこから買取の申し込みまでが可能です。必要のないものをリユースして、新しい、そして必要なものを購入するサイクルの促進につながるとともに、資産・資金を無駄なく活用できるようになります。将来的には、ビックカメラグループでは扱っていない「バイク」・「クルマ」・「家」など、お客様が所有するすべての資産を登録できるようにするとともに、買い物をすると自動で登録される仕組みなども含めて、開発を進めています。
「持ち物帳」アプリ画面
リリースから1年、最大のバージョンアップを敢行
「ラクウル」の利用データを見てみると、買取におけるライトユーザーからヘビーユーザーまで非常に幅広い層のお客様にご利用いただいていることが分かりますが、アプリのダウンロード数や利用数・頻度はまだまだだと思っています。そこで、もっと多くのお客様に利用していただくために、ソフマップはもちろん、ビックカメラ・コジマのカード会員様にも知ってもらえるよう、2019年11月、「ラクウル」とグループ各社のポイントカード連携機能を追加しました。
買取金額の入金先についても従来の銀行振り込みに加え、「ビック買取マネー」を選択できるようになりました。「ビック買取マネー」をご指定いただくと手数料が不要になるほか、買取金額もアップ。貯めた「ビック買取マネー」はビックカメラグループでのお買い物に利用いただけるなど、よりお得に便利になりました。
これからもこの「ラクウル」のサービスを通じ、もっと多くの方々の暮らしにリユースの選択肢を増やすことを目指していきたいと思います。
管理室 課長佐藤 賢二(さとう けんじ)
2017年末より「ラクウル」のプロジェクトに参加。長年従事してきた買取センターでの店長経験や内部監査分野での豊富な経験を、個人情報保護・管理、古物営業法などの法令遵守の観点で活かすためチームに合流した。
アプリを利用した個人売買で盛り上がるリユース市場とその中にあった危機感
プロジェクト発足当時、リユース市場ではメルカリなどのアプリによる個人売買が盛り上がっており、長年中古買取に携わるソフマップには大きな危機感がありました。
一方で、パソコンやスマートフォンには個人情報や写真などの大切なデータが大量に保存されていることや、きちんと動作するのかどうかなどの個人売買特有の懸念点が多数あり、そういった機器を見知らぬ個人間で売買することには不安があるという声も聞こえてきていました。実際、ソフマップがリユース事業を行うにあたって最も大切にしているのは、個人情報を守る「安心」と製品の「安全」でした。
既存システムの再設計と現場に負担をかけない情報連携
同じく立ち上げメンバーだった有馬係長とプロジェクトを進める中、UI面は有馬係長に任せ、システム設計については私が取りまとめていくことになりました。中古の査定情報や在庫を登録する既存システムと今回のアプリを連携させるうえで煩雑だった既存業務を精査し、運用面での業務効率向上についても重視しました。アプリで運用することになれば、これまで手書きだった買取申込書などの書類が不要になり、入力されたデータがそのまま利用できるようになります。また、本人確認の手続きも画像認証システムを導入するなど、これまで以上の「安全」を実現しつつ、効率化が図れるシステム設計に取り組みました。
作業を見直し、買取申し込みから譲渡成立までの時間を大幅に短縮
リリース当初のアプリ画面
従来の通信買取システムは、手書き申込書や本人確認書類のコピーなどの書類を確認したり、買取・譲渡が成立したあとの入金を経理に電話して振込依頼したりと、非常にアナログな作業が多数ありました。そういったアナログ作業の多くをなくし、作業の順序もすべて見直すことで、買取申し込みから譲渡成立・振込までの時間を大幅に短縮しました。
「安心」と「安全」を大前提としながら、幅広くお客様にアプリをご利用いただくために「シンプルな仕組み」と「スピード」によってサービス品質を高めることも必要不可欠だったのです。
このサービスの魅力をもっと沢山のお客様に
「ラクウル」リリース後はプロモーションにも注力しました。「ビックカメラグループのお店でお買い物をされるお客様に対していかに認知を上げるか」ということで、ビックカメラ・コジマを含めた店頭販売員すべてに、勉強会などを通じてこのサービスのメリットを伝える活動を行いました。店頭やスポーツイベントの現場でもキャンペーンを行い、不要なものをソフマップに売っていただくこと、「ラクウル」を使えばそれが本当に「ラク」に売れることをアピールしました。
また私の家族が大の音楽好きで、サービス開始にあたって「何か耳に残るアプローチはできないか?」と話したところ、息子が作詞・作曲、娘がボーカルを担当してくれた「ラクウルソング」が完成しました。正直採用されるとは思いませんでしたが、社内に諮ったところ「いいんじゃないか」との返答が。そんな経緯で「ラクウルソング」が店内で流されることになり、家族総出のプロモーションということになりました。
アプリのリリース後は別の部署に異動し、プロジェクトからは離れましたが、これからもより多くのお客様にサービスを認知していただき、リユースがさらに身近な存在となるよう循環型社会への貢献に取り組んでいきたいと思います。
ビックカメラ有楽町店での店頭キャンペーンの様子
このような形で、さまざまな人のさまざまな思いから立ち上げられた「ラクウル」のサービス。後編では「ラクウル」の中核を担う、浦安商品化センターの現場エピソードや買取品目増強など新たなサービス拡充に向けての取り組みをご紹介します。